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西洋史学
(1)はじめに
グローバル化の波に否応なくさらされ、激しく変化し続ける現代社会においては、短期的な将来のみを予測しようとする現状分析はもはや有効な指針たりえない。むしろ、全世界的な視野のもとで、過去から現在までを複眼的に見通す歴史学の視点こそが、錯綜する情報を的確に選り分け、長期的な展望に立った判断を下すことを可能にする。われわれの目指す歴史学研究とは、悠久の時の流れの中に自らの揺るぎない視座を確保する営みに他ならない。
西洋史学専修課程における研究と教育は、時代的には古代史から現代史まで、地理的にはヨーロッパを中心としながら、南北アメリカやアジア・アフリカとの関係も射程におさめる。西洋史学専修課程の専任の教員は現在6名であり、それぞれの専門分野を代表する研究者である。
授業は、教員それぞれの専門研究にもとづく特殊講義と演習が中心となる。また駒場では、入門講義として「西洋史学研究入門」および「史学概論」を開講している。学生各自の研鑽の最終的な成果は卒業論文にまとめられるが、その指導のために、全教員による「卒論ガイダンス」および博士課程の大学院生(TA:ティーチング・アシスタント)が主催する「サブゼミ」も実施される。授業以外にも、積極的な学生には最新の知識や方法について助言できる体制がととのっている。また、教員・大学院生・学部学生のあいだの親密な交流も、西洋史学専修課程の特色といってよいだろう。
(2)研究室について
西洋史学専修課程は、文学部屈指の大所帯である。在籍する学生は、大学院生をふくめて合計でおよそ100名を数える。大学院生の存在感が大きいこともこの専修課程の特色であり、教育とならんで研究にも大きな比重がかけられていることを示している。このような状況の中、助言を与えてくれる先輩には事欠かないだろう(ただし、毎年10名ほどの大学院生が海外留学に出ている)。
文学部のほかの専修課程とおなじく、当専修課程も研究室システムをとっている。法文二号館一階、附属図書館に一番近い一角に西洋史学研究室があり、基本的に出入り自由である。入口近くには新着雑誌の棚があり、その奥で助教が勤務している。ほかに事務補佐の嘱託もいる。助教は若手研究者であり、授業は担当しないが、学生と教員とのあいだの重要な仲介者であり、また研究室事務をとりまとめる。さらに奥の談話室には、参考図書が配架されている。西洋史学の対象範囲の大きさを反映して、英・独・仏はもちろん露・西・羅・伊・希など、西洋諸言語の図書が四方の壁を埋めているさまは壮観といえるだろう。

学生談話室
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洋雑誌コーナー
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研究室の顔ぶれは多彩であり、20歳そこそこで進学してくる新3年生から、古参の大学院生までが頻繁に出入りする。専修課程の教員も授業の前後に研究室に立ち寄ることが多く、さらには名誉教授が訪問することもある。談話室は文字通り学生・大学院生の談話の場となっている。もちろん、進学前の教養学部生でも、研究室を訪れて、必要な情報を入手し、助教や先輩学生のアドヴァイスを受けることができる。
進学後は教室や図書館に通うのと同じように、研究室に顔をだすことが必要となる。4月の専修課程別ガイダンスから翌年3月の卒業証書授与まで、行事のほぼすべては、ここでおこなわれる。また履修のコツやマル秘(?)情報にいたるまで、様々な情報がここで上級生や大学院生から伝授されるであろう。重要事項は、すべて研究室前の廊下の掲示板に貼り出されるため、研究室に顔をださないと、いろいろと困ることがおこる。
そのほかに重要な伝統行事として研究室旅行が挙げられる。学部4年生が幹事となり、5月の中旬ないし下旬に2泊3日の日程で開催される。全教員に加え、大学院生の有志も参加するため、教員や大学院生と個人的に話ができる良い機会である。近年の行先を列挙するならば、白子(2009年)、湯河原(2010年)、熱海(2011年)、鬼怒川(2012年)、伊東(2013年)となる。例年、夕食後は教員を囲んで、あるいは学生同士で熱い議論が交わされるのが常である。この旅行を通じてはじめて、「研究室の一員になった」という実感を抱く新3年生も多いことだろう。

2009年5月 白子温泉

アテネのパルテノン神殿
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セーヌ川から望むノートル・ダム大聖堂
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(3)進学のまえに
西洋史学専修課程への進学希望者は、教養学部時代から知的関心をひろくもち、多くの読書体験をつみ、高い語学力をつけてほしい。ただの歴史ファンでは、専門的学習はおぼつかないからである。
そのために、いくつかのことを要望したい。第一に、図書館などを最大限に利用して、歴史関係の講座やシリーズ、単行本はもちろん、人文・社会科学の古典や話題の書物を読むことである。進学するまでに、研究したい時代・地域・テーマをおおまかに決めておいてほしいが、しかしそれにあまり固執する必要はない。研究テーマは変更されることの方が多い。大事なのは、自分の知的関心に対応するテーマを見いだそうとする努力である。
第二に、外国語能力は西洋史学にとって生命線とでもいうべき道具である。教養学部時代にじっくりと勉強しておいてほしい。すくなくとも、英語と第二外国語を「読む」力は十分に身につけておくことが必須である。なお、古代史をこころざす場合にはギリシア語・ラテン語を、中世史ではラテン語を、また近現代史ではそれに対応する地域の言語の学習をはじめておくことが望ましい。しかし教養学部での語学習得が不十分だからといって、心配するにはおよばない。やる気さえあれば、西洋史学に進学してからでも、新しい言語を習得することは十分に可能だからである。
第三に、当専修課程にかぎったことではないが、人文系の学問にあっても電子メディアへの習熟は必要不可欠である。実際に、コンピュータに熟達すると、従来の歴史学ではみえなかった新たな問題や解法がひらけてくることもしばしばである。IT技術の基本は早めに体得しておいてほしい。

マルセイユ旧港風景
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大学都市ケインブリッジ
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(4)卒業後は
大学院進学を希望する者は、早くから院生や助教に接触して、先輩としての話を聴いたほうがよい。自分の道を発見する機会となるだろう。ただし、西洋史学に限らずどんな分野であれ、自力で多くの読書をこなし、論理的に思考する努力が、大学院進学の必要条件である。
就職については、近年の傾向からみて、テレビ・新聞などのマスコミ、出版社をはじめとして、一般企業、公務員、教員など幅広い職種の可能性がある。多様な職業分野で活躍する人材を育て、各界に送り出すことも、西洋史学専修課程の大切な役目である。
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