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考古学


 

(1)考古学とは
 考古学とは、文字で記録されなかった人間の歴史を「物」を通して明らかにする学間である。したがって、考古学の対象は、文字による記録が残る以前か、あるいはあまり残らない時代が主となる。では、その後は文献史学にまかせればよいかといえばそうとも限らない。文字で記録されたのは、中央に住み文字を書くことができた上層階級の人たちが、記録する必要や価値があると思ったことがらだけなので、辺境や庶民の生活など、文献記録に残されなかった歴史がその外に広がっており、それは考古学しか解明の手段がない。最近は中世や江戸時代の考古学も盛んである。
 考古学の基本は遺跡の発掘である。現在、日本では年間1万件に近い発掘調査が行われている。世界でも類をみない件数であるが、それはまた失われる遺跡の多さを物語っているという憂慮すべき事態ではある。しかし、それ故に新発見がマスコミを賑わすことが多い。新発見の資料が、従来の定説を覆したり、未知の歴史的事実を照らし出したりすることもしばしばである。それを求めて世界中のいたるところで、研究者は汗を流している。
 発掘調査は考古学の基本といったが、その一部にすぎない。発掘の成果は、その後の地道な学術的分析や既知の資料との比較研究を経て、その歴史的な意味が明らかになる。そしてその積み上げが、従来とはまったく異なる歴史世界の扉を開くことも多い。どの分野でも言えることだが、今までの正解を暗記する勉強から、正解を疑い、主体的に真理を求める思考に頭を切り換えことが学問の出発点である。

(2)考古学では何を学ぶのか
 考古学専修課程の必修科目(括弧内は単位数)は、史学概論(2)、考古学概論(4)、考古学特殊講義(16)、考古学演習(8)、野外考古学(4)、卒業論文(12)である。
 考古学では、文学部のほかの分野にはない特殊な技術や思考方法が必要とされる。たとえば、発掘を始めるにあたって、周囲の地形や発掘地点の正確な記録を残す必要がある。そのため測量技術が必須で、基本的な測量機器は使いこなせなければならない。掘るといっても、やみくもに掘るのではない。地層を1枚ずつ剥ぎながら、何がどのように出てくるかよく観察し、逐一記録を取り、図面を描き、写真を撮りながら掘り進める。掘り出した資料は、水洗、整理、図化を経て、研究者共有の資料として利用できるよう公刊されなければならない。この一連の基本的技術を習得するのが「野外考古学」で、そのⅠは、本郷でさまざまな基礎技術を学ぶが、そのⅡでは、北海道サロマ湖の岸辺にある人文社会系研究科附属の「北海文化研究常呂実習施設」で、実際に遺跡を発掘する。学生宿舎で教員と同じ釜の飯を食べる共同生活をしながら、大自然にはぐくまれた北方地域の古代文化を実地に学ぶ、文学部のほかの学科ではなかなか経験できない特別な実習である。なお最近では、「野外考古学Ⅱ」に続けて、考古学専修課程生向けの「博物館実習B」を、常呂実習施設で開講している。考古学の資料や研究の成果を活用する方法を身に付ける絶好の機会となるので、ぜひ連続受講してもらいたい。
 このような体験を楽しいと思う学生が大部分だが、稀には野外で毎日土を掘る作業を苦痛と感じる学生もいるようである。残念ながらそのような人は、進路を誤ったと言わざるをえない。将来考古学者になろうと思うなら、その行く手には、設備の整えられた実習とは大違いの、未開な原野でのはるかに厳しい条件のもとでの調査が待っているのだから。少し前まで日本の考古学を専攻すると発掘調査の機会が多く、外国考古学では、現地調査の機会が少ないため、机上の文献研究に集中する傾向があったが、現在では状況が大きく変わった。海外での現地調査の機会が増え、外国考古学を志すものでも、野外調査の技術を習得することが必須である。
 このように苦労して発掘資料を得たとしても、「物」は自分からは何も語ってくれない。「物」に歴史を語らせる方法が、またしても他の分野にはない考古学独特の方法となる。歴史的な文脈を読み取る準備として、「物」を時間と空間の中に配置するための「型式学」という方法が基礎になる。その上で遺物、遺構のさまざまな属性の中から、自らの研究目的にあった属性を抽出し、それを分析する。学部2年間の授業は、結局のところ、このような考古学独特の方法を理解し、さらに自分でもその方法が駆使できるようになることを最大の目的として準備されている。失われた過去を甦らせるために、民族学的データとの比較、モデルや仮説からの演繹、帰納的な分析、自然科学的な分析手法など、あらゆる方法が動員されていることを知るであろう。
 「演習」では、発掘の報告書、優れた研究論文、外国の考古学文献など、研究を進めるのに不可欠な資料の読み方を勉強する。これには実際の遺物の観察、データの分析方法なども含まれる。
 考古学の各分野の研究の現状を学ぶ場として、「特殊講義」がある。専任教員でカバーできる分野は限られているので、非常勤講師を依頼して、幅広い分野の学習の場を用意している。34年の二年間でさまざまな分野に触れてもらえるように、開講される講義は毎年変わる。
 このようにして身につけた研究方法を、自分が選んだ具体的な題材に対して応用し、資料の収集から分析、考察、そして発表までをやってみるのが卒業論文である。考古学を始めて1年でテーマを決め、2年足らずで論文の完成まで求められるわけだから非常に忙しい。しかしそれができるかどうかが研究者として育つかどうかの試金石になるし、研究者になった先輩たちを見ると、卒業論文のテーマが一生の研究分野につながった例が多い。
 以上、大学でのカリキュラムを中心に書いてきたが、それ以外にも勉強の場は多い。教員や先輩の紹介で、発掘現場にもぐりこんで、実地に学ぶ人もいるし、博物館の収蔵庫に入って、遺物と格闘する人もいる。また、個別のテーマをもった研究会が各地で開催され、学生も参加できる。そのような場で最先端の研究状況を知ることができる。求めさえすれば、さまざまに勉強の場は用意されているのである。

(3)教員の紹介
 考古学研究室に属する教員の専門とする分野は、日本列島の先史文化、およびその周辺地域である東アジアの考古学である。日本列島の場合、旧石器時代、縄文時代、弥生時代がおもな研究分野であり、東アジアでは、北はロシア極東地域から朝鮮半島、中国、そして南は東南アジアまでという広い地域をカバーしている。日本および周辺地域における基層文化の形成過程の研究に重点をおいているためである。
 また、北海道北見市にある附属常呂実習施設の教員と連携しながら、毎年発掘実習をしており、周辺の古代北方文化を視野に入れながら、アイヌ文化の成立過程を追求している。進学する3年生は「野外考古学Ⅱ」の実習として夏に参加することになる。その北方研究の関連で、最近ではロシアの研究者との共同研究も推進しており、サハリンやアムール川流域での国際共同調査もおこなっている。
 専任の教員以外にも、学内には文学部に朝鮮半島の考古学を専門として教員がおり、総合研究博物館には西アジアの先史考古学を専門とする教員がいる。さらに、新領域創成科学研究科にも、ロシアなど極東考古学を専門とする教員や、考古学と不可分な関連をもつ自然科学分野を研究する教員がいる。一部の教員は文学部の授業を担当し、卒業論文などの相談にも乗ってくれる。
 さらに言うならば、考古学における研究の方法や理論は、地域や時代を超えて適用可能であり、学部の教育ではそれを修得できるようなカリキュラムを組んでいる。したがって、特定の地域や時代の教員がいるかどうかは学生諸君にとってそれほど大きな問題にならないから、心配しないように。

(4)進学を希望する諸君へ
 考古学は広義の歴史学の一分野であるから、歴史関係の講義をできるだけ聴いておいていただきたい。とくに、歴史時代の考古学を専攻するには文献史料に対する素養を積んでおく必要がある。先史考古学では、民族学の知識が必要となる。考古学に進学を希望するもので、外国考古学を志すものは、外国語がすべての基礎になるから、とくにその修得に努めてもらいたい。ただし、日本考古学をめざすものでも、方法論を学ぶためには外国語文献の閲読が必須であるから、重要性に変わりはない。また、考古学では人文科学以外に自然科学の手法もよく用いられるので、雑学でよいから周辺諸分野に広く関心の目をむけておくようにしてほしい。考古学は文学部の中では理Ⅰ、理Ⅱからの進学が比較的多い学科であるが、これからの考古学では理化学的な研究方法がますます重要になるに違いない。
 考古学では、常呂での発掘実習期間の共同生活に代表されるように、教員とは否応なく親密な付き合いをすることになる。それを好機として活用するか、負担と思うかは君達しだいであるが、願うならば前者であることを祈る。
 考古学に進学しようとする学生は、駒場4学期に、必修科目となっている「考古学概論I」、「史学概論」の授業を必ずとるように注意されたい。史学概論はとりそこなうと、本郷進学後も、駒場まで通うことになる。同じく駒場4学期に開講される「人類学概説」は必修ではないが、考古学研究の基礎として重要なので、考古学進学予定者はできるだけ受講されるようお願いする。

(5)卒業後の進路
 考古学のカリキュラムは、研究の専門家を養成することを目的に組み立てられている。しかし、ある学問分野を深く勉強し、それを通して人間社会のありかたに独自の理解を獲得し、また卒業論文というまとまった文章を計画し、必要な資料を集め、論理的に組み立て、説得力のある文章に仕上げるという文学部にほぼ共通する経験に加え、文学部のなかでは特殊な体験である、合宿しながらの集団作業の経験は一般社会に出ても底力になるであろう。
 卒業後、引き続き研究を続けてゆこうとするものは大学院をめざし、そうでない人は、一般企業に就職するのが普通である。その比率は近年では2対3ほどであり、就職のほうが多い。就職先は、新聞社、テレビ局などマスコミ関係をはじめとして、銀行、商社、運輸、情報、地方公務員など様々で、考古学だからという特徴はとくにない。マスコミで考古学出身という経歴をうまく生かしている人もいる。
 修士課程進学者は多くがそのまま博士課程に進学し、継続して研究のおこなえる大学や博物館、地方行政の専門職などをめざすことになる。ただし、そういう職場はそう多くはないから、容易ではないことは覚悟しておいたほうがよい。専門を生かせる場として都道府県や市町村で、緊急発掘調査に対応する組織(埋蔵文化財センターなど)が作られているが、この場合は、学部卒、あるいは修士課程修了の段階で入る例が多い。しかし、これも最近は狭き門になっている。

(6)その他
 考古学研究室では独自のホームページを開設しているので、これも参照するとよいであろう。(http://www.l.u-tokyo.ac.jp/archaeology/) 遠慮せずに研究室を訪問し、先輩たちの話を聞くのが実情を知るには一番と思うが。

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