次世代人文学開発センター

 

 

(1)  次世代人文学開発センターについて

 本センターの前身は昭和41年度に創設された「文化交流研究施設」で、地域間の文化の交流や異なった文化領域にわたる関与と展開について総合的な研究を行うことを目的としていた。その後、昭和49年度からは4部門・1資料室に再編され、平成5年度に朝鮮文化部門、平成6年度に東洋諸民族言語文化部門が増設され、それにともない「基礎理論部門」、「朝鮮文化部門」、「東洋諸民族言語文化部門」の3部門からなる研究組織になった。平成14年度からは「朝鮮文化部門」が「韓国朝鮮文化専攻」として独立し、平成147月から寄附研究部門「文化環境復元」が新設されるのにともない、「基礎理論」、「東洋諸民族言語文化」、「文化環境復元」の3部門による構成に改組された。そして、平成17年度から現在の名称となった。現在は「先端構想部門」(旧文化交流研究施設「基礎理論部門」から名称変更)「創成部門」「萌芽部門」によって構成されている。

 センターは人文社会系研究科・文学部に所属し、研究を主体とした活動を行なう。したがって、センターには文学部各専修課程のように学部学生定員はない。

 

(2)次世代人文学開発センターの特色

 センターは、大学組織の上では研究科と研究所の中間的な存在と位置づけられている。すなわち、東洋文化研究所など、学内の独立した附属研究所と異なり、センターは大学院人文社会系研究科・文学部に所属しつつ、研究を主体とした活動を行うものと規定されている。したがって、センターには各専修課程のように専修に属する学部学生定員がついていない。

 

「先端構想部門」

 

 当部門は、旧文化交流研究施設「基礎理論部門」の活動理念を発展的に受け継ぎ、複数の専門領域にわたる研究、複数の地域文化を対象にする研究、あるいは諸地域間の文化交流の研究など、特に領域横断的で、国際的な研究を行ない、かつ、それを公開発信していくことを目的とする。このため、専攻を異にする様々な分野の教授、准教授たちが着任し、それぞれ、各々の専門とする学問領域に基礎を置きながら、多分野に跨る、あるいは複数文化に関わる研究を行なってきたことが大きな特色である。

 なお、先述のとおり、センターの各部門は専修に属する学生を抱えていない。しかし、文学部教員の一員として「文化交流特殊講義」と「文化交流演習」を開講し、その内容に従っていくつかの専修課程の必修科目にも認定されているので、文学部便覧の各専修課程の「授業科目および認定科目一覧」、および文学部の「授業科目一覧・授業時間割」次世代人文学開発センターの項を参照してほしい。

 

「創成部門」

 

 当部門は「死生学」研究の拠点として発足した。現代社会において切迫した問題となっている“死を見据えた生のありかた”を、人文諸学の多くの方面から、また文化資源学および医学との交流を通じ、多角的に研究するこのプロジェクトは、平成24年度からは本センターから独立して死生学・応用倫理教育センターとなった。

 現在の人文情報学拠点は、萌芽部門に置かれていた次世代人文学データベース拠点を拡大発展させる形で、25年度から本部門に居を移し、新規に発足した。本拠点は、人文社会学の基盤となる知識の保存・発信の方法がデジタル媒体へと大規模に転換され、進化する情報技術の影響に曝されるなか、人文社会学が培ってきた伝統的な研究方法と研究成果とを将来にわたって活かしうる、あらたな研究モデルの構築を目指している。ここで開講される「次世代人文学特殊講義」は、全学大学院に向けて発信されるデジタルヒューマニティーズ教育プログラムの中心科目でもあり、文・理の壁を超えて学生、院生が集い、あらたな人文社会学知の形態を考察する貴重な場となっている。

 

「萌芽部門」

 

平成17年度に開設された新しい研究部門に属し、平成184月より実質的な活動を開始した。研究の目的は、新しい演劇学・舞踊学の構築である。美学・文学・歴史学・美術史学・社会学などを中心に文学部・人文社会系研究科で培われてきた研究の成果を基盤として、演劇学・舞踊学という新しい研究分野をどのように構想するか、ということが課題になる。

また、平成204月より、萌芽部門に次世代人文学データベース拠点が設置され、「大正新脩大蔵経次世代データベース」と「言語資料データベース」とを柱としながら、あらたな人文学の基盤形成と研究方法の本格的模索が始まった。前者は、「大正新脩大蔵経次世代データベース」を基礎としながら、仏教研究遂行に必要な発展的研究情報アーカイブを構築し、あらたな学術空間の創出を図るもので、25年度から人文情報学拠点へと拡大発展し、創成部門のほうに移行している。後者は、大量に電子化した言語資料(テクスト、録音資料等)を基礎データとし、新しい人文学の研究方法(言語資料学、電子文献学)の確立を目指す。電子化された言語資料の乏しい、ロシア・旧ソ連、およびその隣接地域の少数言語(ウラル諸語、モンゴル諸語など)の言語資料の獲得とその電子化に重点を置きつつ、やがて日本語の大規模コーパスが利用可能な環境を整えてゆく。

ほかに、他大学・機関との共同研究として2つのプロジェクトを進めている。まず、イスラーム地域研究は、平成186月、大学共同利用法人人間文化研究機構と東京大学との研究協力協定により、イスラーム地域研究を総合的に推進するための共同研究拠点として創設された。現在、5年計画で「イスラームの思想と政治:比較と連関」をテーマとする研究活動が展開されており、公開のセミナーや研究会を随時開催している。また、23年度から現代インド研究拠点が同じく人間文化研究機構の共同研究拠点として設置され、他大学の第一線の研究者を交えながら、国内の他の5拠点と協力して5年間にわたって活動を行なっている。現代インドの分析、特に経済と環境を中心としたテーマを分析することに力を注ぎながら、国際会議、研究会などを実施している。加えて他の研究機関にはない各種オリジナル資料を集中的に集め、研究や教育の便宜をはかっている。