量子相転移としてのモット転移 モット絶縁体の近くの金属の異常さを理解するのに量子相転移の理論がある。
スケーリング理論(あるいは動的平均場理論など)と量子モンテカルロ計算などの数値計算の結果を組み合わせて、相転移にともなうスケーリング則、普遍性などが明らかになる。
その結果、電気伝導の異常、スピン相関の発達、電荷感受率の異常、モット絶縁相の励起の異常などが簡単な仮定から相互に関係づけられる。
量子相転移としてモット転移を考えるとき、バンド幅制御型とフィリング制御型がある。
金属とモット絶縁体の相図
量子相転移の理論では、転移点の近くで種々の物理量が、フィリング制御型かバンド幅制御型かに応じてどんな異常を与えるのかが示される。
例えば2次元のフィリング制御型のモット転移では、電気伝導のドルーデ重みがドーピング濃度の自乗に比例するような異常な臨界指数が明らかにされた。これは銅酸化物高温超伝導体で実験的に見られる異常な性質と関連している。2次元系のモット転移はスケーリング理論によって理解される。
また、空間次元を我々の世界で実現できる、1、2、3次元系より増やして、無限大にしてしまうと、厳密な結果を計算しやすいことがわかっている。これを動的平均場理論と呼ぶ。次元が無限大になるとスケーリング理論の代わりに分子場理論が正しくなる。
これらの考察から、2次元以上の系ではまばらに動くホールがキャリアというよりは、ひしめきあっている電子が伝導を担っているという考え方が正しいと考えられるようになってきている。
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