微生物薬品化学教室 前ページへ 次ページへ
カイコ幼虫の病態モデルを利用した創薬基盤の確立を目指しています。
生命を根本から理解しようとする、チャレンジ精神を持つ諸君を求む

感染実験に用いるカイコ5令幼虫。昆虫の中では比較的大型のため、扱いやすく精度の高い実験が可能で、一度に多数のサンプルを扱うことができる。さらにマウスと比べ倫理的な問題や飼育コストの点で優れている。

カイコ幼虫筋収縮モデル。おもりで体を伸張させた左の幼虫に、D-グルタミン酸を注射すると、右のように筋肉収縮が起こり、体長が短くなる。カイコ幼虫ではD-グルタミン酸が筋収縮に関わる可能性を明らかにした。

研究課題

1.

黄色ブドウ球菌の病原性発現機構に関する遺伝学的並びに生化学的研究
2. 病原性真菌の病原性発現機構に関する遺伝学的並びに生化学的研究
3. カイコ幼虫の感染モデルを利用した感染症治療薬の探索研究
4. カイコ幼虫を利用した自然免疫系活性化機構に関する研究
5. カイコ幼虫の病態モデルの確立に関する研究

 当教室では、カイコ幼虫の病態モデルを作出して、従来にはなかった創薬コンセプトを確立することを目指している。長い養蚕業の歴史の中でカイコ幼虫の飼育方法が確立されている。またカイコ幼虫には、いつでも簡単に利用できる、という特徴がある。さらに、カイコ幼虫は、脳、神経、筋肉、肝臓、腎臓、心臓、消化管、など、ほ乳動物に存在するほとんどの臓器を備えている。したがって、あらゆる病態モデルの確立が可能であるはずである。現在当教室が最も力を入れている研究テーマは感染症である。多剤耐性の黄色ブドウ球菌MRSA、緑膿菌MDRP、あるいは病原性真菌の出現が医療現場において深刻な問題を引き起こしている。当教室では、カイコ幼虫の感染モデルを用いて、これらの微生物の病原性発現機構の理解を目指している。この研究は、病原性発現をターゲットとするという新しいコンセプトの感染症治療薬の開発に役立つと期待される。また、自然免疫の分子機構が昆虫とほ乳動物で共通している点に着目して、カイコ幼虫の自然免疫活性化に関する研究を行っている。自然免疫を活性化させる物質は、感染症ばかりでなくさまざまな疾患の克服に役立つと期待される。