生体分析化学教室 前ページへ 次ページへ
生体分子の機能を1分子レベルで計測し、生命機能を解明する
キーワード:1分子蛍光イメージング、1分子ナノ操作

研究課題

1.

分子シャペロンやキネシンなどの生体分子機械の動作原理の研究
2. 細胞内mRNAのプロセシングと輸送の1分子蛍光イメージング
3. 生体分子の機能と相互作用を解析するためのマイクロ・ナノデバイスの開発

 21世紀は生命科学の世紀です。生物を理解するためには、いろいろな階層で研究する必要があります。一番下の階層は蛋白質やDNAといった生体分子が働いている階層です。それらが集まって、生体超分子、細胞、器官などが作られ、さらには個体、社会、生態系が構成されています。私たちは、最小機能単位である「生体分子」の階層と、生命としての機能が初めて発現する「細胞」の階層に焦点をあて、生体分子がどのようなメカニズムで機能しているのか?集合してどのようにシステムを構築しているのか?を明らかにしたいと考えています。 
 具体的には、1個の生体分子(大きさにして数nm)に蛍光色素を結合させ、超高感度ビデオカメラを取り付けた蛍光顕微鏡で観察します。生体分子は、たった1分子でも機能を発揮できる分子機械です。例えば、神経細胞の中で物質の輸送を担っているキネシンと呼ばれるモーター蛋白質は、ATP加水分解による化学エネルギーを運動という機械的なエネルギーに転換して動いています。この分子モーターは微小管と呼ばれるレール蛋白質の上を2つの足で8nmのステップで運動します。人類は、このような分子機械を作る技術を現時点では持っていませんが、生物分子機械の動作メカニズムを研究することにより、近い将来実現したいと考えています。一方、多種・多様の生物分子機械が自己集合することにより、複雑なシステムが作られます。このシステムも人工のものと大いに異なっています。「生命」とは、これらの複雑なシステムの営みと言っても良いでしょう。私たちは、こうした生物システムを研究することにより、生命の謎に迫ります。


生細胞内の1分子をイメージングするための蛍光顕微鏡システム



エバネッセント照明による酵素反応(ATPase)の 1分子イメージングの原理