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発生・成長・老化における細胞死シグナルと神経極性形成の研究

研究課題

1.

発生・成長・老化における細胞死シグナルの調節と生体機能
2. 神経極性形成の制御機構

 プログラム細胞死は、ダイナミックな組織形成や組織リモデリングにおいて積極的な役割を果たしています。神経系では神経幹細胞が生まれるステージから細胞死が観察され、神経組織の形態形成や神経回路網形成に重要な機能を果たすことが示されています。さらに、成体においては細胞死メカニズムの異常活性化によって様々な神経変性疾患が引き起こされています。私たちの体は個体発生から成長・老化過程まで栄養飢餓、感染や傷害といった様々なストレスにさらされていますが、当研究室の研究から生体ストレスに応じてカスパーゼが段階的に活性化され細胞死と細胞死以外の生理機構を果たすことが明らかになってきました。細胞死シグナルの生体制御とその生理的な役割を個体レベルで明らかにすることで、生体ストレスの受容と応答による細胞社会構築原理の解明を目指しています。
 終分化した神経細胞はその成熟過程において樹状突起・軸索といった明らかに異なる極性をもった細胞内構造を形成していきます。このプロセスは神経細胞の機能を考える上で重要なばかりではなく、その異常が神経変性に関わることも示唆されてきています。神経極性形成機構を脳内の単一細胞に注目した遺伝学を展開することで、この問題の解明を目指しています。


図1:ショウジョウバエ複眼(上は野生型、下はカスパーゼの活性化による複眼細胞死の誘導)
図2:ショウジョウバエ脳における単一細胞の可視化(上は細胞体と樹状突起、下は神経軸索)
図3:蛍光蛋白質遺伝子導入によって可視化された生後発達期のマウス大脳錐体細胞
図4:カスパーゼ活性化検出プローブSCATによるアポトーシスの生体イメージング