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生命現象の理解を指向した生物応答調節剤の創製(分生研)
キーワード:タンパク質、時空間的制御、生物応答調節剤、サリドマイド、核内受容体リガンド、ステロイドホメオスタシス、酵素阻害剤、創薬化学

研究課題

1. タンパク質の時空間依存的な発現と機能を制御する分子の創製
2. 核内受容体を標的とした創薬化学研究
3. タンパク質のトポロジーとダイナミズムを制御する生物応答調節剤の設計と合成
4. 多能性を有するサリドマイドを鋳型とした新創薬法の展開

 当研究室では創薬化学・有機合成化学を基盤とした新しい生物応答調節剤の創製を行い、それらを利用し、生命現象の理解を目指しています。
 多くの生命現象はタンパク質の発現・局在・分解によって制御されています。
これまで、タンパク質の発現を制御する研究においては、核内受容体を対象にその制御分子としてアゴニスト、アンタゴニスト、パーシャルアゴニスト等の創製に成功しています。
 一方、タンパク質分解によって生命現象を調整する機能性分子の設計および創製も行っています。siRNAとは異なる方法で標的タンパク質を随時破壊でき、細胞内情報伝達機構等タンパク質の機能解析の画期的新手法として期待しています。見出されたツールを用いての生物応答ネットワークの解明が目標です。
 また、タンパク質のトポロジカルな構造を制御するフォールディング分子の設計・創製を行っています。構造−機能を制御する化合物であり、生物応答調節剤ひいては医薬においても新たな領域を開くものです。更に、多能性分子サリドマイド等を創薬テンプレートとした生物応答調節剤の創製を行っています。


「低分子化合物によるタンパク質の構造・フォールディング制御」に関する研究のひとつとして、「フォールディング異常変異型ロドプシンの細胞内局在異常の修正」という研究を進めています。この例ではロドプシン変異による網膜色素変性症に焦点を当てていますが、今後は特定タンパク質のフォールディング異常に基づく各種疾患に幅広く応用していくことを考えています。


標的タンパク質分解誘導剤の創製研究の一例です。cIAP1のユビキチンリガーゼ活性を利用して、標的とするタンパク質のユビキチン化およびプロテアソームによる分解を誘導する分子を各種、設計・創製しています。