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相図の特徴 -- 絶縁体から金属へ --

 銅酸化物高温超伝導体の顕著な特徴はCuO2面での電気伝導を担うキャリアの濃度すなわち電子濃度を変えられることである。これをフィリング制御という。(La,Sr)2CuO4(La-214系)を例にとって考えよう。この場合、母物質であるLa2CuO4反強磁性的な秩序をもった絶縁体である。ブロック層中のLaをSr(あるいはCa)におきかえていくことにより、CuO2面にしだいにキャリア(今の場合ホール)がドープされ,反強磁性秩序が消えて金属絶縁体転移(モット転移)を起こして,金属的な電気伝導を示す。
この金属への転移と超伝導が生ずる超伝導転移はほぼ同時である。このふるまいは下の相図に図式的に示されている。

絶縁体にキャリアがドープされて電気伝導が生ずるという点で,この物質群は一見するとSiやGeといった半導体と似た点があるようにも見える。実際,ドープできるキャリアの種類は半導体のときはn型とp型が可能であるが、銅酸化物超伝導体の場合もLa-214系やY-123系のように反強磁性絶縁体に対してホールがドープされる場合(ホールドーピング)とNd-214系のように電子がドープされる場合(電子ドーピング)とが知られている。

このように半導体との共通点があるように見えるが、実際はこの物質群で起きている現象はSiやGeのような半導体とは全く違った領域すなわちバンド絶縁体の近くではなくモット絶縁体の近くで起きている。また、この物質群の場合はホールがドープされる場合も電子がドープされる場合も上図のように、反強磁性絶縁相と超伝導相が隣りあっているという特徴がある。

銅酸化物のモット絶縁相は詳しく述べると、電荷移動型絶縁体とよばれ、酸素2p軌道の関与が大きいのが特徴である。これは酸素2p軌道のエネルギー準位と銅3dx2-y2軌道の準位がともにフェルミ面に近いためである。これに対してモットハバード型絶縁体と呼ばれるモット絶縁体は酸素2p軌道のエネルギー準位がフェルミ面から遠くはなれている。

銅酸化物高温超伝導体のその他の項目
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3つの相転移と強い電子間相互作用

結晶構造、電子構造の特徴と超伝導の舞台

異常な常伝導金属相

擬ギャップ

超伝導秩序の対称性がdとなるエキゾティックな超伝導

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